これによりインサーキットアナライザー(ICA)は、インダクタンス、キャパシタンス、インピーダンス、抵抗などの属性を測定し、全ての被試験デバイス(DUT)においてテストノードの結果が公差内であるか、またコンポーネントのオープン/ショート、誤実装有無などを判定します。必ずしも全てのテストにおいてDUTの電源を入れる必要はありません。ネイルコンタクトとピンボード上の関連するアナログチャンネルまたはデジタルドライバー/センサー(D/S)との接続には、リレーマルチプレクサーが用いられます(図1)。
図1:典型的なICT 2x16リレーマルチプレクサー(図には1つのチャネルのみ掲示)
一部のより高度なシステムでは、デバイスに電力を供給し、負荷が掛かった状態で入出力特性を測定することにより、ICAモジュールが機能制限コンポーネントテスト(FCT)を実行することもできます。多くの場合、このテストは2番目のテストアダプターを使用して個別に行われますが、これにはいくつかの現実的な理由があります。
第一に、ICTのプローブは、通電されたデバイスでフルファンクションテストを実行するために必要な電圧または負荷電流を供給するものではありません。専用のFCTテストベッドは、過熱、アーク放電、過度の摩耗の心配なくより高い電流または電圧を流すために設計された高負荷接点を持っています。欠点としては、これらの接点が広いスペースを占有するため、FCTテストアダプターは通常、一度に1つのDUTのみしかチェックできないことです。
第二に、ICAの内部プログラマブル電源、リレー、および電子負荷も高電流テスト用に設計されていません。電源ユニットをより強力なものに単純に交換した場合、その高電流はグランドバウンス、配線による電圧降下、スイッチングの誘導性負荷から生じる過渡現象による測定の不正確さなど、高感度ICTアナログ測定で深刻な干渉問題を引き起こす可能性があります。 専用のFCTアダプターによる測定は、通常、フィルタリングが重くなると感度が低下するため、干渉の影響を受けにくくなります。また、電源とリレー接点はより堅牢で、複数のアンプを切り替えることができます。
第三に、リレー構成の変更に使用されるリレーインターフェイスハードウェアおよびソフトウェア制御は、通常、パラレル入出力(PIO)コントローラーおよびリレードライバーを介して行われます(図2)。ICTアプリケーションの場合、1つのピンアセンブリから次のピンアセンブリへの接続を多重化するためリレーは主に各DUTテストの最後に再構成されるので、リレースイッチング速度は問題になりません。ただし、FCTテストアダプターでは、リレーを使用して各DUTの個別テストのファンクションテスト設定を変更するため、リレーへの制御データスループットが高くなります。専用のFCTセットアップでは、一度に1つのDUTのみがテストされるため問題はありませんが、複数のデバイスを組み合わせたICT/FCTアダプターでテストする場合、リレー制御の速度制限は 大きなボトルネックになります。
図2:テストシステムのブロック図
最後に、ICTによる測定はミリ秒単位で行うことができますが、FCTは通常、通電状態の部品への測定を瞬時に行うことができないため、テスト所要時間ははるかに長くなります。信頼性の高い測定を行うためには、出力が安定していなければなりません。通常、FCT測定は、同じ製品のICT測定に比べ5〜10倍の時間が掛かります。ICT/FCTを一つのプラットフォームで行うと、FCT測定が量産のボトルネックになる可能性がありますICT、FCTのプロセスが分離されている場合、1台のICTマシンが並行する複数のFCTテストベッドに部品を供給することにより、スループットを向上させボトルネックを削減できます。
オーストリアのRECOM Powerは、2つの異なるテストアダプターによるコスト増加とテスト時間の問題を解消するべく、新DC/DCコンバータシリーズにおいてICTの高速テスト利点と、100%機能テストの実用的な品質保証をすべて1つのテストアダプターで実現する方法を見つけました。これは技術的に複雑なチャレンジでした。この新シリーズは、最大6Aの出力電流と最大60Vの入力電圧があり、各PCBパネルには40個の部分的に完成したモジュールが搭載されていたため、ヘビーデューティ電源を使用した並列テストが必要でした。したがって、データスループットが非常に高くなるだけでなく、タイミングエラーが問題になる可能性がありました。RECOMはチェコ共和国のElmatestと契約し、EMSプロバイダーが使用するTeledyne Teststation LH用のICT/FCT複合テストアダプターを作成しました。
ElmatestのアプリケーションエンジニアであるZdenek Martinekは、当初からこれは通常のプロジェクトではないことに気付いていました。解決する必要のあるいくつかの重要な問題がありました。ICT/FCTを1つのマルチパネル上に結合する方法、高いリレー制御スループットを処理する方法、FCTプロセスを短時間で行う方法、および高感度プローブを損傷することなく高電力レベルに対処する方法などです。結果として、RECOMのR&D部門のMarkus Stögerとの緊密な協力により、すべての解決策が見つかりました。
解決すべき最初の課題は、製品のマルチパネル上でICT/FCTを組み合わせる方法でした。各PCBには40の独立した回路が形成されていました。これらのモジュールは部分的に形成されたものではなく、完成品、ケース入り、スクリーン印刷済みであり、すべての内部ノードがICTピンパネルにコンタクトできるわけではありません。この解決には熟考が必要でした。DC/DCコンバーターは高い内部周波数でスイッチングし、EMIの問題を回避するために、金属ケースとその多層PCBが完全な6面ファラデーケージを形成するという製品コンセプトが不可欠です。 内部の高周波スイッチングノードへの外部接続により、EMIがEMCシールを通過して放射する経路が形成され、測定エラーを引き起こす可能性があります。
密閉されアクセスできない製品をICTテストする方法」のソリューションは、各マルチパネルにテストモジュールを設けることでした。テストモジュールを使用すると、テストモジュールに必要なすべてのICTノードにアクセスして、各パネルが正しく形成されていることを確認できます。テストモジュールで従来のICTが実行されると、残りのモジュールではFCTチェックのみが必要になります。
図3:コーナーにあるICTテストモジュールを示すマルチパネルPCB(表裏)
テストおよび測定を実行するために必要なコードは、テストベクトルと呼ばれます。測定に必要な入力、出力、およびアナログチャネル構成の配置は、データ「バースト」として送信されます。これらの構成は、ローカルのオンボードメモリにロードされ、タイミングストローブ信号によって同時にアクティブになります。この構成は、テストが完了し、測定データがCPUに転送されるまでラッチされます。ただし、その間に、次のデータバーストをレジスタにプリロードして、次のストローブ信号を待つことができます。この方法により、ICTではベクターあたり約4µsという非常に高速なスループットを実現できます。
ただし、GenRad Teststationで使用される標準リレードライバーは、MXIbusを介して制御PCから連続してコマンドが与えられるパラレル入出力(PIO)コントローラーから駆動されます(図2)。この構成は、高速システムコントローラーでリレー構成を制御する一つのテストベクトル内で異なるFCT測定を処理するプロジェクトにとって遅すぎることが判明しました。リレースイッチングレートを高速化するために、「アクティブバースト」と呼ばれる手法に基づきRECOMテストアダプターに新しいリレードライバートポロジが実装されました。
アクティブバーストでは、一部のリレーはPIOコントローラカードではなく、ICA測定が完了するまでアクティブに維持されるD/S出力から直接駆動されます。各D/Sは9つの機能(アイドル、ローまたはハイのドライブ、ローまたはハイのセンス、ホールド、ディープシリアルメモリのドライブ、ディープシリアルメモリのセンス、CRCデータの収集)で構成できるため、このケースでは、 リレーに直接電力を供給するドライブ機能を用います。D/Sドライブ出力はTTL電圧と電流レベルに制限され、通常、個別のドライバーなしでリレーを動作させるのには十分ではありませんが、ダーリントントランジスタ電流増幅器リレーコイルを使用してテストアダプターを構築することにより、D/SモジューがPIOコントローラーをバイパスしてリレーを直接動作させることが可能になりました。これにより、瞬時のリレー制御が可能になり、コーディングがはるかに容易になりました。
2番目の課題は、FCTテストを加速する方法でした。アナログレベルが安定するのを待つと、全体的なテスト時間は許容できないほど長くなります。そこで、ICAシステムに既に備わっている処理能力を利用する手法、つまり直接デジタル合成(DDS)や離散フーリエ変換(DFT)などの波形生成および解析手法が用いられました。これらの手法は、アナログブリッジバランシング測定手法よりも本質的に高速です。これらの高度な技術を活用して、パワーアップされた機能テストの結果を判断・認識できることが突破口となりました。固定負荷で出力が安定した後に入力および出力の電流と電圧を測定する代わりに、出力負荷を数ミリ秒間パルスし、処理結果から最終出力特性を導き出すことができます。これにより、測定時間が最大80%短縮されました。
図4:6端子インピーダンス測定
開発において重要な問題の1つは、このようなダイナミックな負荷と供給の切り替えを、パスカル、アセンブラー、およびベーシックの混合であるGenRadテストステーションで使用される古い「スパゲッティ」ソフトウェアとマッチさせることでした。GenRad社は2003年に買収されましたが、今日でも元のハードウェアの上に最先端のオペレーティングシステムを搭載することが可能な堅牢性を誇っています 。
2番目の課題の解決策は、高感度なプローブの損傷を避ける方法という3番目の課題も解決しました。負荷電流はごく短い時間パルスされるため、6Aのピーク電流でわずか2アンペア定格のプローブを非常に小さい領域に接触しても、顕著な局所加熱はありませんでした。オンタイム/オフタイムの比率は、連続測定でもプローブの先端がパルス間で冷却され、燃えたり焦げたりしないようにプログラムできます。このパルス負荷技術により、電源の過負荷も防止できます。
ICTは、出力電圧プリセット用の内部分圧器抵抗測定にも使用されます。テストシステムは自動的にICTから出力電圧、出力電流、および入力電圧範囲を取得し、これらの値をFCTテストプログラムに転送します。これにより適切な機能テストが実行可能になり、またオペレーターのエラーによりFCT変数が範囲外に設定され、製品または高価なピンボードまたはプログラム可能な電源を損傷する可能性がなくなります。
これらすべての手法の結果として、一つのDC/DCモジュールに対するICT/FCTテスト時間を1.8〜1.9秒に短縮することができました。つまり、マルチパネルPCBは、テスト前後のPCBのテストアダプタへの接続切り替えを含め80秒以内でテストされます。5000枚の最小生産稼働により累積テスト時間が節約され、製品シリーズ全体的な成功に貢献しました。 そのため、RPMモジュールの初期ラインアップは1シリーズ8種類でしたが、今日では合計3シリーズ22種類に拡張され、すべて同じフットプリントとテストアダプタを共有しています
図5:動作中のテストアダプター
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