低消費電力の基板実装型DC/DCコンバータの製造に使用される技術は、他の電子機器と比較すると、よりゆっくり、かつ独特に発展してきました。典型的なコンバータは、何十年もの間、スルーホール封止モジュールまたはオープンフレームの表面実装「ドーターボード」のままであり、新製品は1980年代以降に標準化されたピンアウトとフォームファクターでまだ発売されています。しかし、インターフェイスやA/D、D/Aコンバータなどの機能ブロックは、ディスクリートソリューションから、高さ数分の1ミリ、フットプリントは内部ダイのサイズよりわずかに大きい表面実装IC、それも今やナノメートル単位のトレース形状を持つ「チップ」に進化し続けています。
理想の追求
このような状況を打破するために、電源設計者は理想を夢見てきました。それは、オプションのアクティブ レギュレーションと包括的な保護を内蔵した高周波/高効率動作を含む、幅広い機能を備えた制御 IC の組み込みです。トランスは、多層基板に機械的に配置された平面コアやプリント巻線などの技術を使用する必要があります。このICソリューションとトランスは、必要な関連サポート部品とともに、単純なロイヤー回路よりも部品コストが大幅に高くなりますが、柔軟な組み立て自動化と規模の経済性により、より優れた性能と一貫性、より高い電力密度という市場の要求にコスト負担なく応える道となります。
オーストリアに本拠を置くメーカーRECOM[2]は、このような「最先端」技術を
「K」シリーズと呼ばれる低電力DC/DCコンバータに搭載し始めました。同社は、人件費を大幅に削減するために自動化に多額の投資を行う一方で、部品コストを最小限に抑えるために基板や部品の大量生産にコミットしています。同時に、革新的な設計技術により、通常要求される幅広いバリエーションに対して、柔軟な製造プロセスで簡単に製品を構成することができるようになりました。
発売中の新製品例
この新技術を採用した製品の一例として、RECOM
RKKシリーズ では、統合コントローラと
平面トランス を実装し、性能向上と組み立ての完全自動化を実現しています。同社は、互換性のためにSIP7形式を維持し、1Wの定格を選択しました。その結果得られた効率の向上を利用して、動作温度範囲を拡大し、ディレーティングなしで105℃までの動作を実現しました。1W定格は、絶縁型通信インターフェースやハイサイド
ゲートドライバなど、多くのアプリケーションで採用されています。また、温度範囲の拡大により、ハイスペックな産業用や車載用など、より幅広い市場を開拓することができます。初期製品と比較したRKKシリーズの相違点と性能向上の概要は表1の通りで、量産時販売価格を抑えながら、性能は顕著に向上しています。新製品は公称ア
ンレギュレ―テッドですが、入力電圧の変化に対してある程度の補償があり、例えば±10%の入力電圧変化に対して出力変化は±5%以下となっています。さらに、部品を封入する必要がないため、軽量化とコスト削減が図れるという特徴もあります。同シリーズには、高精度が必要な場合にポストレギュレータ出力を搭載したバージョンもあります。
|
Royer |
RECOM RKK Series |
BoM Cost |
Lowest possible |
Higher |
Transformer construction |
Time-consuming |
Fully automated |
Assembly cost |
Fixed, even with high volume |
Reduces with increasing volume |
Line Regulation (±10% variation) |
Unregulated (±8%) |
Semi-Regulated (<5%) |
Load Regulation (10-100%) |
Unregulated (±10%, rising to +25% with no load) |
Semi-Regulated (< ±5%) |
Short circuit protection |
No |
Yes |
Efficiency |
75-84% |
>85% |
Isolation |
4kVDC/1s |
4kVDC/1s |
Operating temperature |
Industrial (-40°C to +85°C) |
Automotive (-40°C to +105°C) |
Performance consistency |
Good |
Excellent |
Overall Cost |
Low |
Lower |
表1: 基本的なロイヤーと、RECOM「RKK」シリーズDC/DCコンバータの相違点及び性能向上のまとめ。
その他の新開発
RECOMの新技術の原理は、同社の
非絶縁型DC/DC にも採用されており、好評の
R-78シリーズ をアップグレードし、リニアレギュレータの代替品として使用できるようにしました。新製品は
「R-78K」として、効率を最大96%まで向上させ、入力範囲を36Vまで拡大しました。また、動作温度はディレーティングなしで90℃になりました。
従来のシンプルな設計を、コストを上げずに高度な回路技術や製造技術に置き換えるというトレンドに沿って、RECOMの既存製品はさらに「K」へのアップグレードが予定されています。新しい「razor」製品がリリースされるたびに、「最先端」の利点を享受することができるのです。
参考文献
[1] https://www.tsmc.com/english/dedicatedFoundry/technology/logic/l_3nm