気候変動と電子機器のエネルギー効率

この原理の一例は電圧調整に見られます。産業用DC電源は一般的に24Vまたは12Vを供給しますが、ほとんどの制御回路は3.3Vまたはそれ以下で動作します。このギャップを埋めるためには、電圧を下げるレギュレータが必要です。最もシンプルで一般的に使用される解決策はリニアレギュレータであり、これは無数の電子システムに組み込まれています。リニアレギュレータは実装が簡単で、通常は入力、グランド、出力の接続のみが必要です。しかし、このシンプルさには大きな欠点が隠れています：レギュレータは本質的に可変抵抗器として機能し、電圧差を熱として放散します（図1）。これは大きなエネルギー損失につながります。

より効率的な代替手段はスイッチングレギュレータです（図2）。パワートランジスタを高速でオン/オフに切り替えることで、これらのデバイスは無駄なエネルギーを大幅に減らしながら希望の出力電圧を維持します。トランジスタはスイッチング時にのみ顕著な熱を放散し、完全にオンまたは完全にオフの状態ではほとんど熱を放散しないため、効率が大幅に向上します。

スイッチングレギュレータのもう一つの利点は、待機電力消費が少ないことです。リニアレギュレータは通常、負荷に関係なく内部のハウスキーピング回路のために約8mAを消費しますが、スイッチングレギュレータはアイドル状態では約1mAしか必要としません。 この違いは、ガレージドアオープナーのように毎日短時間しか動作せず、長時間待機モードのままになるデバイスでは特に重要です。

リニアレギュレータの場合、待機使用量は年間約1.75kWhに達する可能性があります。対照的に、スイッチングレギュレータは同じシナリオで消費する消費するエネルギーが最高で8倍少なく、不必要な電力消費を大幅に削減します。さらに、現代のスイッチングレギュレータは、旧型のリニアモデルと直接互換性をもつ設計となっており（図3）、既存のシステムをより持続可能な設計にアップグレードすることが容易になっています。

スイッチングレギュレータは一般的にリニアレギュレータよりも初期購入価格が高くなります。しかし、ヒートシンク、サーマルペースト、取付金具、組立作業のコストを考慮すると、全体的な費用は、多くの場合スイッチングソリューションの方が低くなります。これを説明するために、指紋認証、バッテリーバックアップ、IP67規格の密閉筐体を備えたスタンドアロンのドアエントリーシステムを開発しているメーカーを考えてみましょう：

スイッチングレギュレータは1台あたりの価格が高くなる場合がありますが、高い効率によりシステム全体の要件が軽減されます。上記の例では、24時間バックアップ能力を維持しながら、より小型の充電器とバッテリーを使用することができます。結果として、運用コストの削減、よりコンパクトな部品、輸送重量の軽減など、すべてがカーボンフットプリントの削減に貢献します。重要なことに、このシステムは熱ストレスも回避し、指紋リーダーなどのデリケートな部品を損傷から保護するのに役立ちます。

効率的な電源ソリューションを採用することで、環境への影響とシステムコストの両方を削減できます。効率が高く、待機電力消費の少ないデバイスは、地球環境に貢献するだけでなく、市場における明確な競争優位性をもたらします。

私たちは、持続可能性とコスト効率を兼ね備えた電源製品の設計に取り組んでいます。これには入念な設計と慎重な部品選定が必要ですが、その成果は努力に見合う価値があります。気候変動は1つの企業や個人だけでは解決できませんが、協力すれば、より持続可能でエネルギー効率の高い技術を創造することができます。小さな一歩一歩が重要です。