鉄道用途の電力コンバータ

資産の効率的な活用

「スマート」システムで新規および既存の車両をより効率的に活用し、アイドルおよびアクティブな車両を特定してトラフィック密度を高めることができます。運用状態は、遠隔状態監視（RCM）および状態監視保全（CBM）の手法を使用してモニターすることもできます。この技術により、必要な時に修理と保守を識別し、コストを節約し、信頼性と稼働率を向上することが可能になります。状態監視では、占有率や移動距離などのデータを収集し、これらのデータを分析して更に効率を高めることができます。鉄道セクターは、この「IoT」テクノロジーに今後12年間で約270億ドルを投入すると予測されています[2]。

遠隔状態の検知

資産の状態と状況は、車軸数、ベアリング温度、供給電圧変動、ノイズ、衝撃/振動、ドア開閉サイクル、占有率、大気質、光レベル等のセンサーによって把握できます。センサーは温度測定サーミスタと同じくらいシンプルですが、デジタル信号プロセッサ（DSP）、データロガー、LoRaまたはWLANを使用する有線または無線インターフェースにより、ますます「インテリジェント」になります 。車両もGPSで追跡される場合があります。センサーの自己完結性とワイヤレス通信により、レガシー資産のアップグレードがより簡単になり、新しい在庫もあるため、遠隔アップデートとカスタマイズの恩恵によりケーブル接続が削減され、柔軟性が向上します。

センサーへの給電

通常、センサーはメインシステムレールからDC/DCコンバータでダウンコンバートされた数ワットの低電圧で動作します。多くの場合、システムレールの公称値は110VDCで、時に24Vまで下がることもありますが、マルチチャネルセンサーまたはアクチュエーターを駆動するには、約40 Wの電圧が必要になる場合があります。通常、各センサーには個別の絶縁DC/DCが使用され、出力電圧降下を抑え、センサー相互干渉などのEMC問題を引き起こす可能性のあるグランドループを回避します。ただし、システムの電源レールは「クリーン」ではありません。EN 50155-2017規格では、通常動作で+25％/-30％の電圧変動と100ミリ秒で公称値の60%の電圧降下ならびに140%のサージが許容されますが、「機能偏差」と、1秒で公称値の125％から140％のパフォーマンス低下を伴うサージは許容されません。これらの変動に対応するために、110Vシステム用のDC/DCコンバータは通常43〜160VDCで動作する必要があります。

EN 61000-4-xシリーズ規格で規定されているように、システムレール上に高速過渡過電圧が存在しますが、サプレッサーと単純なLCフィルターはこれらを減衰させる可能性があります。ただし、電圧供給が完全に失われることもあり得ます。EN 50155は、S1およびS2の二つのクラスでの電力喪失を規定していますが、最悪の場合でも、公称電源からの電力喪失は10ミリ秒であればパフォーマンス低下は発生しません。一部の機器では、電源の切り替え時に30ミリ秒の電力中断が発生する場合があります（クラスC2）。これをカバーするため、通常、直列絶縁ダイオードの後にコンバータ外部のホールドアップコンデンサが追加されます。これにより逆極性保護も可能になりますが、これは規格の別要件です。

図1は、車両の温度センサーによってファンが作動し、WLANにより温度と状態が通知されるアプリケーション例です。43〜160Vの入力範囲を持つRECOM 8W DC/DCは、センサー回路に調整済の絶縁5V電源レールを供給します。このDC/DCコンバータは32 x 20 x 10mmと非常にコンパクトです。RECOMのDC/DCコンバータは車両EMC規格EN50121-3-2に非常に高いコンプライアンスレベルを持っていますが、過渡および低伝導エミッションに対する高い耐性を備えたオプションのEMIフィルターとともに、拡張ホールドアップおよび逆極性保護も利用可能です。


RIA 12への準拠

レールDC/DCコンバータの仕様には、110 Vシステム(Vin, nom x 3.5)において20ミリ秒で最大385 Vの高エネルギーサージを規定するUK RIA 12規格への準拠が要求されることがあります。ただし、ソースインピーダンスがわずか0.2オームの場合、過渡電圧サプレッサーで入力をクランプすると、電力が過剰消費されます。RECOMのRSPxx-168プリレギュレーター（図2）は、DC/DCコンバータの入力範囲内でサージ電圧を最大値まで低下させます。RECOMは20W、150W、または300W定格のDC/DCコンバータ用に3つの異なるモジュールを提供しています。


より高い電力レベルでの変換

集中制御鉄道車両システムとトラックサイドの設置には、より高い電力レベルの電力変換器が必要で、RECOMのブリック型パッケージDC/DCコンバータRPxxx-RWやRPxxxRUWシリーズが広く使われています。公称値12：1の入力範囲で動作し、サージや電圧低下を含む24〜110VDCの全てのレール規格をカバーします。DINレール形式も一般的で、例としてRECOMの姉妹会社であるPower Control Systems（PCS）が発売するSQ120は、EN 50155に準拠した110VDC入力の120W高耐久型製品です。Power　Control Systemsの製品ポートフォリオには、最大定格10kWの単相及び三相AC入力を備えた鉄道車両及びトラックサイド用途向けのラックマウント型AC/DCコンバータ、8Wから4kWのDC/DCコンバータもあります。また、出力周波数を30〜600 Hzで調整可能なAn EN 50155準拠の300W AC/ACインバータも購入可能です。

ストレスフルな鉄道環境
EN 61373では、レール環境の衝撃、振動、温度、湿度のレベルを、設置環境に応じ車両にとって最も過酷な環境から、車体に取り付けられた内部エンクロージャー（カテゴリ1、 クラスB）などの比較的穏やかな環境まで分類し規定します。センサー用のDC/DCコンバータは、このストレスの少ない環境に取り付けられるケースもありますが、多くの場合、依然としてカプセル化と高耐久化が必要になります。コンバータの耐用年数は通常20年であるため、RECOMやPCSの製品は、完全な性能評価、高加速寿命試験（HALT）、高温浸漬、熱サイクルなどのテストで保証されています。

既製品で入手可能なソリューション

RECOM [3]およびその姉妹会社であるPower Control Systems [4]は、堅牢なEN 50155準拠DC/DCコンバータの幅広いポートフォリオと、低電力（8W-240W）モジュールから最大10kWまでの、鉄道アプリケーション向けの完全なターンキーソリューションを提供しており、いずれもカスタム対応可能です。

両社は、長年の経験により鉄道アプリケーションに関する包括的なエンジニアリングサポート、詳細な環境コンプライアンスレポート、EMC評価を提供します。公称入力電圧24〜48Vまたは72〜110V DCのコンバータがEN 50121-3-2準拠するに必要なEMIフィルタリングを含むリファレンスデザインも提供可能です。（それぞれR-REF04-RIA12-1およびR-REF04-RIA12-2）

RECOMおよびPower Control Systemsは、ワットからキロワットまでのセンサーおよび集中システムに電力を供給する、高コスト効率でシンプルかつ鉄道規格に準拠した既製DC/ DCコンバータと電源を提供します。RECOM製品は、代理店であるArrow Electronics [5]から入手できます。

参考文献

[1] Statista www.statista.com/topics/1088/rail-industry
[2] Cisco - The internet of Everything: Statista: PDF What is the internet of everything/
[3] RECOM www.recom-power.com
[4] Power Control Systems www.powercontrolsystems.com
[5] Arrow https://www.arrow.com/en/products/search?cat=&q=recom&r=true

RECOM: We Power your Products